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2009年6月15日 (月)

NHKと映画

(翌日記)

11日に「ハゲタカ」、今日15日は「精神」。
映画を観てきた。

共通項がたまたま「NHK」だったので、それがタイトルになっているが、
それ以外に深い意味は無いです。

ま、せっかくなので、話の「マクラ」を「NHK」に設定して所感なぞ。

=====「ハゲタカ」=====

2007年、NHKにて6回シリーズで放映され、
「イタリア賞」も受賞したTVドラマの映画化…

ま、かつては「TVドラマの映画化」は日本映画が
典型的に「苦笑」モードに突入するパターンだったのですが、
広告収入を軸に展開してきたTV業界の収益構造が変化してきたことも相俟って、
DVD収益までもにらんだ、「カネになる」クオリティのモノが増えて来た中に、
コマーシャリズムとは無縁な「巨象・NHK」が、
乗り込んできた…って、
まさに「ハゲタカ」みたいな構造と、皮肉な話題も出てきそうな状況ではあります。

NHKそのものは利益団体ではないので、
映画の制作主体は関連会社である「NHKエンタープライズ」
NHK職員ディレクターである監督は、一時出向して制作に携わったそうで。

どうでもいい話が続きましたが、
内容は面白かったです。普通に。
グローバル化、新興勢力「中国」との仮想戦。
激変する現実の経済状況にあわせて脚本が大幅に書き換えられた苦悩も
リアリティとして伝わってきました。

「車」のモチーフとしては、先に観た「グラン・トリノ」とも絡みますが、
車を中心にした製造業が世界中で激動していることを
共通項として捉える見方もありかと。
感動の点では、クリント・イーストウッドの圧勝…

無いものねだりをすれば、
TVシリーズの頃は、6話構成だったおかげで、
翌週の展開が待ち遠しくてヤキモキした覚えがありますが、
その手の「引っ張り」が無い分だけ、スリルが減ってしまった。
しょうがない。
そればっかりは。

ついぞ、思い出しました。2007年3月。
ある人の引き合わせが、引き合わせの連鎖を呼んで、
主演した大森南朋さんの、シネマフェスティバル

大森南朋さっぽろシネマフェスティバル

のトークショー撮影スタッフ(ボランティアです)を仰せつかることになり、
成り行きで、大森さんを囲んだスタッフ打ち上げに私も参加しちゃいまして…

酒と料理を囲んで、当時私が大森さんに聞いたこと

私「ハゲタカ、最後どうなるんでしょうね」
大森「はは、たのしみにしてくださーい」(笑顔なし)

これだけ。
この宴席は、ちょうどTVシリーズの第5話が終わって、
最終話の3日前というタイムリーな時期ではあったのですが…

俳優がそんなオイシイことを直前に話すわけが無いだろ
何言ってるの?おれさま…

…他に切り出す話題も無く、会話はそれだけ。

まあ、数週間もかかって、
最後は寝る間も惜しんで大変な準備・苦労をされてきた
私以外ののボランティアスタッフの
慰労を兼ねた(女性が多かったのでね…特に)会であることは
わきまえていたつもりなので、そちらのふれあいを大事にしてもらいたく、
大森さんとは最望遠の席に座って、
おしまいまで、こじんまり佇んでいるつもりだったのが、
気の効きすぎるスタッフの配慮。
こちらは遠慮。

最後の最後に
近くの席に引き合わせられてしまったのだからたまったものではない。

で、口を突いたのがさっきの言葉。
配慮に遠慮がかぶさって、私との時間は最短に留めておきたかった。

交わりあうはずも無い、空虚なやり取りで、
距離感を取ろうとする私の内心が伝わってくれていれば…と、
それだけのコミュニケーション。

刹那、濃密な時間。
ハゲタカの思い出ちらり。

=====「精神」=====

こちらは「タブーに挑戦」…するつもりではなかったけど、
結果的にタブーだということを実感した、と話す
想田和弘監督の「観察映画」第2作。

監督はニューヨークに拠点を置く映像作家だが、
かつてNHKのドキュメンタリー番組の制作経験をお持ちとのこと。

モザイクの一切無いフレームの中で、
忍法「黒子の術」を装いたくても、
被写体の言葉で次々に忍法を破られてしまい、
観察者ではいられなくなる監督の「立ち位置」がどうしても表出してしまう。
ブレかかる「観察」のコンセプト。
面白いと思った。

BGMなし。テロップなし。モザイクなし。
「病棟」とはいえない精神科で、
病名の紹介も無く、モザイクのフィルターもない「ヒト」が写っている。
病巣が、社会というか、観ている自分の中にあるものだと言うことを、
監督の追体験の中から…

見ることができるかもしれないし
見ることができないかもしれない
共感する気持ちが生まれるかもしれないし
批判する気持ちが生まれるかもしれない

緻密な構成を経て、
荒っぽく提示される…そんな気が、私にはした。

各国の映画祭ですでに相当な表彰を受けているようだが、
良くぞ取り組んだと、勝手に賞賛の気持ちが湧いてくる。
多くの人が見るべきと、押し付けがましく、思う。
劇場じゃなくて、いずれ出るであろうDVDでもいいですけどね。

上映劇場は、渋谷、シアター・イメージフォーラム。
入場した回は幸運だった。
上演終了後に、監督が登場しての質疑応答、
いわゆるティーチインがあった。

いきなりの「どうぞ」の監督のうながしに、
聞きたいことが山ほどあるであろう皆さんの
日本人的遠慮の突破口になるべく、
最初に挙手をして、本編エンドロール前の
静止画に込められた示唆に切り込んだ。
「追悼」の文字と、3人の出演者。について。

私「亡くなられたということで…しょうかね」

死因を聞きたい好奇心の本心にはオブラートをかけてしまったが、
十分真意は伝わっており、間をおいて監督は率直に語ってくれた。
3名のうち2名は取材から公開までの期間に、
自ら命を絶たれているとのことだった。
監督もショックを受けていることのひとつだと語ってくれた。

取材が影響したかどうかとか、そういった野暮ったいことは、
彼ら(被写体)の本来持ち合わせている苦悩と
切り分けることができるものではないので、
聞く気もなかったし、監督の意見に意味は無い。
念のため、コレを読んだ方に、その手の予断を挟んで欲しくないと感じている。
少なくとも、上映後の共有した時間という前提でのやり取りである。
事実関係を知ることで「無常」を確認したかっただけである。

話をティーチインに戻すと、
その後、矢継ぎ早に手が挙がり、
質問者は、
・精神医療の関係者
・映画学科の学生(一番多かった)
・現役カメラマン
・精神障害の診断を受けた当事者…
など、多岐にわたり、1時間を超えるやり取りとなった。
そういえば、私は立場を話さずに質問した…礼儀を欠いたかな…まいっか。

クロージングに、監督がこの映画にまつわる自著の紹介と、
印税の半分を精神医療に寄付する旨の説明があり、
帰途レジで立ち止まり、パンフレットと共に著書を手にとって、
ささやかな支持の意志をあらわすことにした。

Sodabook1

劇場の出口で、監督がサインを付け加えてくれた

Sodabook2

表出しない内的精神病態については、私自身にも僅かながら経験があります。
(現在は寛解(治癒)していますが)
その経験から、もう10年ほど前になりますが、
混乱による興奮状態(大声・支離滅裂)の方が、
なんらかの方法による突破で職場に現れた際、
他者を遠ざけて1対1になり、対話し、興奮を鎮め、共感を得て、
最終的に握手でお引取りいただいた…という、対応をしたことがあります。

一連の対応を遠巻きに見ていた上司の皆さんは
(その場にいた人の中で私が一番の若輩だったので)
私のことを「猛獣使い」と言うか、
「神がかり」的な才能だと、滑稽な見方をする人もいました。

たしかに普段接することが無いゆえに緊張状態になりますから、
その緊張の根底にある「偏見」のフィルターが
かかっていることに「健常」とされる人の緊張状態では
なかなか気付けないものです。
これもいわゆる「健常者」の「病理状態」といえるのですが…

相手の状態は「狂っている」と、
想像力を断絶する「社会的モザイク」が、
「未体験の恐怖」になっているだけだと思っているのですが、
それを突破する可能性。
私自身は表現する手段を持たなかったのですが
この映画は見事に示唆してくれています。

よく批判の対象になる「社会」というやつは、政治とかよりも
己の心に潜む「心理」に最も近く、つながっていることを、
図らずも気付かされるので、
見ていて具合が悪くなる人もいるはずですが、
私はむしろ爽快になってしまった。

===帰宅後、購入した監督の著書、一気に読了。

ティーチインの質問のやりとりはほとんど著書に書き込まれていた。
同じような無限のやり取りを監督は繰り返すことになるだろうが、
その交流の持つ意味は大きいように思う。
受けて側にとって。
謙虚に振舞う監督にはお疲れさまといいたい。

私の質問はかなりイジワルだったのか、
批判の矛先になるとの配慮からなのか、
著書の中では触れていない。

鬼の首を取ったつもりは無いが、
回答前の一瞬見えた逡巡。

監督の次回作を期待したくなる。
黒子に徹しようとするあまりかえって際立ってしまう
想田和弘というヒト、その一面に好感を持ったから。

私の中に、悪意が見つかったから。

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